The lyrics
君が代の歌詞は、どう書くのが正しいのか
歌はひとつなのに、字は三つあります。どれかが間違いなのではなく、時代ごとに「正式」が入れ替わってきました。
いま学校や式典で歌われる形と、その原型、そして法律が定める形。三つを並べます。
君が代は
千代に八千代に
さざれ石の
巌となりて
苔のむすまで
千代に八千代に
さざれ石の
巌となりて
苔のむすまで
1893(明治26)年、文部省告示「祝日大祭日歌詞並楽譜」所収の形
わが君は
千代に八千代に
さざれ石の
巌となりて
苔のむすまで
千代に八千代に
さざれ石の
巌となりて
苔のむすまで
題しらず・読人しらず(905年頃 成立)
法律が定めているのは、ひらがなです。
1999(平成11)年の国旗及び国歌に関する法律は、別記第二で歌詞をこう書いています。巌も苔も、漢字ではありません。
君が代は 千代に八千代に
さざれ石の いわおとなりて
こけのむすまで
さざれ石の いわおとなりて
こけのむすまで
平成十一年法律第百二十七号(e-Gov法令検索の本文で照合)
つまり、法律上の正式表記はひらがなです。学校で習う漢字まじりの形は、1893年の文部省告示に由来します。どちらも「正式」で、拠りどころが違うだけです。
字は、ずっと旅をしてきました。
奈良
『万葉集』は信濃の千曲川の小石を「細石」と書いて「さざれし」と読ませました。細かい石が、そのまま名でした。
平安
『古今和歌集』の写本は「わが君は」で始まります。
平安中期
『和漢朗詠集』のころから「君が代は」の形が広まったとされます。本により「千世にましませ」「苔のむすまでに」の揺れもあります。
明治26年
文部省告示は漢字で「巌となりて苔のむすまで」。
平成11年
法律の別記第二は「さざれ石の いわおとなりて こけのむすまで」。
千年のあいだに、はじまりの句も、巌の字も、入れ替わりました。それでも歌は残っています。忘れられても、変わっても、消えないものがある——石の話と、同じ形をしています。
詞は作者不詳の古歌、曲の林広守(1831–1896)も没後70年を超えており、どちらも著作権の保護期間にはありません。ここには自分で組んだ本文だけを置いています。
Sources
出典
- ・『古今和歌集』巻第七 賀歌(題しらず・読人しらず)
- ・『和漢朗詠集』
- ・『万葉集』巻十四 東歌
- ・文部省告示「祝日大祭日歌詞並楽譜」1893(明治26)年
- ・国旗及び国歌に関する法律(平成十一年法律第百二十七号)別記第二 ── e-Gov法令検索で照合