Into modern Japanese
君が代を現代語に訳すと
逐語で置きかえた訳と、流れを整えた訳。二つ並べると、訳すと落ちるものが見えてきます。
逐語訳。
一句
君が代は ── あなたの御代は
二句
千代に八千代に ── 千年も、八千年も
三句
さざれ石の ── 小さな石が
四句
巌となりて ── 大きな岩となって
五句
苔のむすまで ── その岩に苔が生えるまで
意訳。
あなたの世が、千年も八千年も続きますように。小さな石が寄り集まって大きな岩となり、その岩に苔が生えるほどの、長いあいだ。
原文には「〜ますように」にあたる語がありません。「苔のむすまで」で言い切って、祈りの部分は言わずに置いています。言わないことで言う——訳すと、ここが落ちます。
訳しにくいところ。
「代」
御代・治世・生きている間。どれを選んでも、残りの意味が落ちます。
「君」
あなた・主君・天皇。時代によって説明が変わってきた語です。訳は、どれかを選ばざるをえません。
言い切り
結びがありません。「までに」とする写本もあり、そちらは続きを予感させます。
原型の『古今和歌集』では「わが君は」で始まります。「わが」がつくぶん、呼びかける相手が近く感じられます。
原型のほうも、訳しておきます。
『古今和歌集』では初句が「わが君は」です。訳すと、呼びかけの距離が変わります。
わが君は
千代に八千代に
さざれ石の
いはほとなりて
苔のむすまで
千代に八千代に
さざれ石の
いはほとなりて
苔のむすまで
題しらず・よみ人しらず。賀歌の冒頭歌
あなたさまが、千年も八千年も。「わが」がつくぶん、目の前の相手に向かって言っている感じが出ます。賀歌——お祝いの歌を集めた部——の冒頭に置かれていることと、よく合います。
訳すときに、何を補っているか。
祈りの語
原文にありません。「続きますように」は訳者が補っています。
主語
だれの代かは書かれていません。訳では「あなたの」と補うことになります。
つなぎ
「小さな石が/大きな岩となって」の間に、原文は助詞を置いていません。訳では「集まって」「寄り集まって」などを補う人が多くいます。
三十二音に、これだけの空白があります。訳が訳者によって違うのは、この空白をどう埋めるかが違うからです。
Sources
出典
- ・『古今和歌集』巻第七 賀歌(題しらず・読人しらず)
- ・『和漢朗詠集』
- ・国旗及び国歌に関する法律(平成十一年法律第百二十七号)別記第二