The shortest
君が代は、世界一短い国歌か
ひらがなで三十二文字。そのうち一音は、定型からあまっています。あまる場所が、よりによって「さざれ石の」です。
数えてみます。
一句
きみがよは ── 五音
二句
ちよにやちよに ── 七音
三句
さざれいしの ── 六音
四句
いわおとなりて ── 七音
五句
こけのむすまで ── 七音
あわせて
三十二音
和歌の定型は五七五七七で、三十一音です。君が代は五七六七七で、三十二音あります。一音だけ、定型からあまっています。
あまっているのは三句目です。「さざれいしの」の六音。この歌で石の名が出てくる、ちょうどその一句が、定型をはみ出しています。字あまりは和歌では珍しいことではありませんが、場所がここだというのは、石を数えている側からするとおもしろい偶然です。
『万葉集』には「細石」と書いてさざれしと読む例があります。五音で収まる読み方が、古くはあったということです。どちらが本来かを、この台帳は決めません。
「世界一短い」は、どこまで言えるか。
歌詞が三十二音で、演奏は一分に満たない。短いほうであることは、たしかです。ただし国歌の長さは、比べ方が一つではありません。公式に歌う節の数が国によって違い、長い歌詞のうち一節だけを歌う国もあります。何をもって「その国の国歌の長さ」とするかで、順番は変わります。
だから「世界でも最も短い部類」とまでは言えて、「世界一」と言い切るには比べ方を決めねばならない——というのが、この台帳の書き方です。
古さのほうは、根拠が示せます。
歌詞の原型は『古今和歌集』にあります。撰進は延喜五年四月十五日(西暦905年5月21日)。巻第七 賀歌の三四三番、しかも賀歌の冒頭歌です。千百年以上前の歌が、いまの国歌の歌詞になっています。
「世界最古の歌詞を持つ国歌」と言われるのは、この年代が示せるからです。長さより、こちらのほうが確かな話です。
Sources
出典
- ・『古今和歌集』巻第七 賀歌 三四三番(題しらず・よみ人しらず)
- ・『万葉集』(「細石」にさざれしの訓)
- ・国旗及び国歌に関する法律(平成十一年法律第百二十七号)別記第二